● 北海道出身の磯川大地さん
大地さんは、1988年生まれで、北海道出身。
小さい頃から本の虫だった。
高校生の時に松下幸之助の自伝に影響を受けた。
「自分は学校向きの人じゃない、社会向きだから、早く社会に出た方が良い」
と思い立って、進学校であった高校を中退して、社会に飛び出した。
その後は、東京のとある書店で、丁稚奉公として住み込みで働き始めた。
その書店は、営業終了の時間になると、常連の溜まり場になるような書店だった。
常連たちは、半分まで下ろされたシャッターを潜って、お酒片手に集まっていた。
その中には、中小企業の経営者やスポーツ選手、世界企業の役員もいて、
本を買うついでに、お酒を飲みながら談笑していた。
所属する社会も地位も異なる多様な人が集まり、文字や言葉で情報が交差する場所となっていた。
そんなサロン的な場所というものに、面白さ、居心地の良さを感じていたという。
その後、北海道を拠点に映像制作会社の仕事を始めた。
出張で東京に来た時、初めてシーシャと出会った。
下北沢のシーシャ屋には、様々なバックグラウンドを持つ人が集まっていた。
シーシャを囲んでいるうちに、立場に関係なく、自由に談笑できて、
『あの書店』のような魅力を感じたという。
そんなシーシャ屋にドハマりした大地さんは、
東京出張がある度に、毎日シーシャ屋に通っていたという。
3.11の震災を機に「自分の地元でも、こういう場所を作って地域に貢献しなければ」という想いが強くなり、開業を決意した。
北海道の北見市にある、行きつけの喫茶店を間借りする形で、
2012年『いわしくらぶ 北見店』を開業した。
北海道でもシーシャは受け入れられ、あっという間にお店は軌道に乗った。
「こういう場所を日本の色んなところに作っていきたい」という野心と共に、東京進出を決意。
2017年に『いわしくらぶ 東京支店』を水道橋にオープンした。
● 弱い魚たちが集まる『いわしくらぶ』
『いわしくらぶ』の由来は、北海道でいわし漁のニュースを見たからだという。
後付け的な理由としては、『いわし』は、漢字で『魚』に『弱』と書く。
個々の鰯(いわし)は小さいが、『スイミー』のように、群れを成すことで、天敵から身を守りながら回遊することができる。
中央集権的な強者の集いではなく、周辺に偏在している弱い個が、ゆるく集まれる場所。
個の境界線を溶かし、化学反応を起こして、何かに繋がっていく場所。
そんなサロン的なお店にしていきたいという想いが込められているという。
店内は、窓から差し込む日差しが心地良い空間だ。
開放的な店内の壁面には、本棚が並んでいる。
小さい頃から本の虫だった大地さんがセレクトした本や、お客さんが持ち寄った、あらゆるジャンルの本で埋め尽くされている。
大地さんの原体験である『あの書店』を思わせつつ、
オープンな雰囲気で、どんな人でも受け入れ、溶け込める不思議な魅力のある店内だ。
● 人との繋がりで集まったドリンクたち
『いわしくらぶ』では、シーシャを頼まずに、カフェのみの利用も可能だ。
ドリンクのラインアップは、これまでに関わってきた人との繋がりで、
自然と集まってきたものだという。
日本の野山から見つけ出した草木を使用してお酒にする『日本草木研究所』のリキュール。
東洋古来のハーブとスパイスを原料にした『HOLON GIN』。
出荷規格外となってしまったアスパラを原料にした『アスパラ茶』。
など、目を引くラインアップの数々だ。
どれも丁寧なこだわりを感じる、高品質なドリンクたちなので、是非試して欲しい。
● あえて続けるクラシックスタイルのシーシャ
『いわしくらぶ』のシーシャのスタイルは、大地さんの原体験である、クラシカルなシーシャのスタイルを維持している。
近年スタンダードとなっているシーシャは、ヒートマネジメントシステムにより伝熱のバランスを保つことで、優しい煙を安定させる運用方法だが、
『いわしくらぶ』では、クレイトップに炭を直置きするスタイルだ。
炭の直置きは、熱のバランスを保つことが難しい。
ひと吸いごとに伝熱にブレが生じるものだが、これにより変わりゆくシーシャの揺らぎを感じられるところが魅力だという。
もちろん、丁寧なメンテナンスにより、初心者にも吸いやすい煙を提供しているので、安心して欲しい。
『いわしくらぶ』は、曜日と時間帯ごとに、お店の雰囲気が変わる、面白いお店だ。
是非、通い詰めて、自分の好みの使い方を見つけて欲しい。